【看護師直伝】おしっこの管の家での管理とよくあるトラブルの対処法〈詰まった時や外出時はどうする?〉

さやみん

「おしっこの管を入れて自宅に帰るなんて信じられない」

「どうにかしてこの管を抜いて欲しい」

おしっこの管を入れて、不安を感じている方はあなただけではありません。

入院中におしっこの管(尿道カテーテル)を入れることになり、様々な事情でそのまま自宅へ退院しなければいけないという方はたくさんいらっしゃいます。

しかしご本人にとっては今まで経験したことないような管を体につけて自宅で生活しなければならず、不安ばかりが募ってくるという方も多いと思います。

そんな尿道カテーテルをつけて自宅へ帰る方のために、今回は退院調整看護師の私が自宅での基本的な管理方法や注意点、トラブル時の対処法などについてお伝えしてみたいと思います。

この記事はこんな人におすすめ
  • 今入院中でおしっこの管をつけたまま自宅へ帰るように言われている
  • おしっこの管をつけたまま退院になったが、どうしていいのか分からない
  • 家族がおしっこの管をつけて帰ることになったが、家族はどのようにすればいいのか分からない

 

このように尿道カテーテルについて漠然とした不安を抱えている方の参考にしてもらえれば幸いです。

おしっこの管をつけて帰らなければいけない理由

まず、なぜオシッコの管が入っているのかについて考えてみましょう。

おしっこの通り道が塞がってしまっている

おしっこは尿道と呼ばれる尿の通り道を通って排泄されます。

しかし、そこが何らかの原因で詰まってしまうと尿が通過障害となり、膀胱に溜まってしまい危険な状態になってきます。

これを尿閉と医療用語で言いますが、このような尿閉になってしまった方に対して管を入れることで、つまりを無くし尿がスムーズに出やすくするためにオシッコの管を入れる必要があるのです。

この原因としては、

  • 癌(腫瘍)
  • 前立腺肥大

など様々な要因でおしっこの通り道が詰まってしまうリスクがあるので、管を入れて通り道を確保していくことが重要になるのです。

神経損傷

あなたはおしっこに行きたいと思った時に、なぜそれを尿意として感じるのでしょうか?

脊髄と呼ばれる神経が沢山集まっている部分には、手や足などといった部分的な神経がそれぞれ決まっており、膀胱の神経もちゃんとあります。

しかしその神経が傷つけられると、感覚がなくなってしまい、膀胱に尿が溜まった感覚が分からず、おしっこを外に出すことができなくなってしまうのです。

このような方の場合も管を入れて、おしっこがたまらないようにしてあげる必要があります。

おしっこの管は一生入れたまま?

おしっこの管を入れたまま退院される方のほぼ全員がこのような質問をされます。

それほどこのカテーテルを入れて退院するということは、かなり抵抗があり、不安が大きいことを示していると言えます。

しかし、この尿道カテーテルは1度入れたらずっといれるものではないので安心してください。例えば前立腺肥大であれば前立腺の大きさなどを定期的に外来で見ていきながら治療が進んで症状が軽くなれば、おしっこの管を抜いて自分でおしっこができるようになるという方もたくさんいるんですよ。

必ず抜けるという保証もありませんが、ずっと入れなければいけないということもないので、とりあえず今の時点で自宅で安全に管の管理ができることを目標にして考えていきましょう。

基本的な管理方法

おしっこの管を入れたまま帰る際には必ずしなければいけないことがあります。その基本的な管理方法を紹介します。

溜まった尿を袋から捨てる

管を入れたまま、何もせずに過ごしていると、袋の中に尿が溜まり続けて溢れてしまいますよね。そのため、定期的に袋の中のおしっこをトイレに破棄しなければいけません。

この時のポイントは毎日決められた時間に、量を量ってから捨てるということ。

看護師は毎日このようにして尿道カテーテルの管理していますが、その理由は毎日同じ時間に尿を捨てることで24時間の決められた尿の量が把握することができることと、尿量を把握することで異常の早期発見につなげることができるためです。

例えば時間を決めずにおしっこを適当に捨ててしまうと1日の間にどのぐらいの尿が出たのかという正確な量がわかりませんよね?

例えば1日に2Lのおしっこが定期的に出ている方の場合、突然それが1リットルくらいになったり、もっと少なくなってしまった場合には管のつまりなど異常を考えてすぐに対応をしなければいけません。

そうした場合にはなるべく早く主治医に相談して受診しましょう。

適当に時間を決めずに尿を捨ててしまうと、このおしっこの正確な量が把握できないためにトラブルがあっても発見することができなくなってしまうのです。

お風呂の入り方

管をつけたままお風呂へ入ることが心配という方もいるかと思いますが、おしっこの管が入ったままお風呂へ入ることは何も問題がありません。

むしろ、お風呂やシャワーなどをしてしっかり管が入っている部分を綺麗に洗っておくことが重要です。

洗いもせずに放置してしまうと、そこから感染をし身体中に菌がまわってしまったりという危険な状態になることもあります。

できれば毎日シャワーなどをして管が入っている部分は生活清潔に保つようにしましょう。

つまりをとる

おしっこの管は長時間使っていると管自体も劣化してきたり、尿の性状によっては管の中が通りにくくなってしまうこともよくあります。

一見見た目は普通でも、途中から尿が詰まってしまって下に落ちなくなってしまうといった現象がよく起こります。

そういった時に看護師は管を軽く持って揺らしたり、つまんでみたりといったことをすることで、尿の出がスムーズに出るようにしています。

ですので、自宅で自分で管理する場合には管の中を尿が通っているかを観察をして、もし通りが悪くなっている場合には、揺らしてみたりといった刺激を与えるなどの対処ができるようにしましょう。

おしっこの管で気をつけること

おしっこの管を入れたまま家で生活する場合に気をつけなければいけないことがいくつかあります。

おしっこをためる袋の高さ

入院中では看護師が決められた場所に尿をためる袋をつけていて、点滴台などを押しながら自分で歩いていたと思います。しかし、家に帰ると点滴台などはありませんよね?

つまり自分で工夫して、おしっこの袋を持ち歩けるようにしなければいけません。

実はこの袋を吊り下げておく高さが最も重要で、袋に入っているおしっこが膀胱の方に逆流しないように管理を徹底していかなければいけないのです。

万が一袋を高く持って、おしっこが膀胱の方に逆流してしまうと、1度外に出た不潔な尿の中にが細菌が混じって、また膀胱に戻ってしまうことで膀胱炎や尿路感染症といった危険な病気に感染してしまうリスクが高くなってしまうのです。

私たち看護師もこのような感染には慎重に気をつけているので、家に帰ったら袋は高く持ち上げすぎない太ももよりも必ず下に固定しておくということを徹底するようにしてください。

みんなはどのように袋をぶら下げているの

実際に退院した方々がどのように、おしっこの袋を持っているのかということが気になりますよね?

実際におしっこの袋を入れるためのバッグをご家族が手作りをしたり、または100均などで売っているような簡単なショルダーバッグなどを買ってきて肩からぶら下げて生活している方もいます。男性の方はベルトにS字フックでかけておくという方も多いようです。

外出時などに他の人から見られて嫌という場合には、このような他人からわかりづらいようなものを使うということが大切です。

あまり外にも出ずに自宅内で基本的に過ごす場合には、バッグなどを使用しなくても問題はありません。フックなどを利用して、椅子の手すりに掛けたり、ベッドの横にかけるといった簡単な方法で構いません。

布団で寝起きする場合の注意点

自宅にベッドがなく、床に直接布団を敷いてそこで寝起きをする場合、体と尿の袋の高低差が無くなり、オシッコの管が入っている部分とおしっこが溜まっている袋がほぼ同じ高さにあるため、逆流しやすくなってしまうのです。

そのため布団で寝起きしている方の場合には、布団自体を少し高くしてみたり、この機会にベッドをレンタルすることなどを検討してみてはいかがでしょうか?

よくあるトラブルと対処法

入院中はおしっこの管は看護師が管理しているため、自分ではあまり気にならないかもしれませんが、自宅へ帰ると何かあった時は全て自分で対応していかなければいけません。

御家族の方も起こりやすいトラブルなどを理解しておき、何かあった時にどのように対応すればいいのかをしっかり考えておきましょう。

おしっこの管が抜けてしまった場合

強く引っ張りすぎたりすることで、おしっこの管が抜けてしまうこともあります。もし管が完全に抜けてしまった場合は、すぐにかかりつけの病院へ連絡をし、管が抜けてしまったことを伝えてください。

すぐ病院でまた入れ直しをすることになるはずで、「抜けちゃったからいいや」と思うのではなく、必ずすぐに連絡をするようにしてくださいね。

お腹が膨らんで苦しくなってきた

おしっこは袋に溜まってはいるけれど、下腹が膨れてきて苦しくなってきた場合には、膀胱におしっこが溜まって上手く尿が排出されていないことが考えられます。

たとえ袋の中におしっこが少しずつ溜まっていたとしても、何らかの原因で出が悪くなっていることは確かなので、まずはかかりつけの医師などに相談をしてみることが大切です。

また訪問看護を事前に利用している場合には、訪問看護師に相談してみるのもいいでしょう。

訪問看護師はこのような尿道カテーテルを入れたまま自宅で生活をしている方を多く経験しています。よくあるトラブルに対応できるように、いざという時の対処法もしっかり把握していることが多いです。

例えばこのように管が詰まってしまった場合には、管の中を洗うといったこともできるので、まずは訪問看護師がどのように対応してくれるのかを直接契約している訪問看護師さんのところへ聞いてみるのがいいでしょう。

血が混じって出てきた

血尿という現象ですが、おしっこの管の中に血が混じるようになってくるのは危険なサインです。

おしっこの通り道が傷つけられたり、または腫瘍がある場合にはそこからの出血なども考えられるので、すぐにかかりつけの病院へ連絡してください。

 

出かける時のコツ

何らかの用事で外出をする場合には、ちょっとしたコツがあります。

まず袋の中におしっこが大量にたまった状態では移動するのも重くて大変になってしまいますよね?

必ず外出前に1度おしっこの量を確認し、トイレで払ってしまうようにしましょう。その際は必ず何ミリリットル捨てたのかをしっかり記録しておくことも忘れずに。

そうすると、身軽の状態で外出することができるので、負担が軽くなりますよ。

見た目が嫌だという方の場合には

いくらバックで隠しているからといっても、見た目が変で、外出が苦痛になってしまうことも・・・

そんな時には足に袋を括り付けて、ズボンの下に隠してしまうというお出かけ用の袋もあります。

このような商品はネット医療機器を扱うメーカーの他にも、最近ではネットで手軽に買えることも多くなってきているので、気になった方は調べてみてください。

しかし安易に何回も袋を付け替えることは感染のリスクを高めることになるので、1日に何回も袋を付け替えるということがないようにしましょう。

おしっこの管を安心して家に帰るために

おしっこの管の管理についてここまでお話ししてきましたが、最後に必ず使って欲しいサービスがあります。

それは訪問看護です。あなたは入院中、このおしっこの管の管理を誰にしてもらっていましたか?

それは病棟で働いている看護師さん達ですよね?

心配なことがあれば、ナースコールで呼んだり、おしっこも決まった時間に看護師さんが捨ててくれっていたはず。このようにおしっこの管の管理のプロフェッショナルは看護師なのです。

しかし退院後は病院自宅で生活をしなければいけないため、看護師さんはそばには居てくれません。

訪問看護を使うことで自宅近くの訪問看護ステーションから看護師さんが安心できるように病院と同じようなお手伝いをしてくれて、トラブルへの対処もしてくれるというメリットがあります。

私はおしっこの管をつけて自宅に帰る方には、必ず訪問看護を使っていただくようにすすめています。中には

「帰ってみればどうにかなるよ」

という方もいますが、このような方こそ危険!

そういう方こそ家での生活が、詳細にイメージできていないのです。

実際に帰ってみると、

  • どうやっておしっこをしてればいいのか
  • お風呂にはどうやって入ればいいのか
  • 袋をびちょびちょにしてしまっていいのか
  • 取り外しはどうすればいいのか

といった様々な疑問が頭に浮かんできて混乱してしまう方が非常に多いのです

こうなってしまわないためにも、入院中に訪問看護師さんと顔合わせをして契約をしておくことで、不安が大きかったり分からないことがあった時には訪問看護師さんに連絡をし、相談にのってもらえたり、いざという時には自宅に駆けつけてもらって対応してもらうということもできるようになります。

ご家族の立場でも、生活を安心して生活するためには、このようなサービスを是非進めてあげるようにしてください。

まとめ

おしっこの管をつけて家に帰るというのはとても抵抗があり、大きな不安を抱えている方が非常に多くいらっしゃいます。

大丈夫だと思っていても、実際に家に帰ってみて「やっぱりよくわからなかった」「どうしよう」ということでまた次の日に外来に来てしまう方も少なくありません。

だからこそ、入院中によくわからないことは担当の看護師さんなりによく質問をして安心して自宅へ帰る準備を進めていくことが大切なのです。

ご家族の方も「入院中大丈夫だったから平気でしょう」という考えではなく、本当に家に帰って自分で全部できるのか?という視点で一緒に考えてみてください。そして少しでも不安があるのであれば、訪問看護や他の見守りサービスなどを積極的に利用して安心して生活ができるように整えていきましょう。

この記事を書いている人
管理人 さやみん
管理人 さやみん
現訪問看護師 ケアマネジャー 元退院調整看護師
総合病院勤務の時に1000人以上の患者様、ご家族様からの介護・病気・終活などの相談に対応。 「その人らしい生き方」「介護で苦しまない」をモットーにアドバイスしています。 治療も介護も正解はない! 「これでよかった」と思える人を増やすべくネット上で活動しています。
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