老人ホームは寂しいところ?入居拒否をする高齢者の本音を聞いてみた
あなたは自分の親をいつかは施設へ入れたいと思っていますか?
私が相談を受けるご家族のほとんどが
「親を施設に入れたい」
と希望をされています。
家族としては施設に入ってもらえれば、
- ずっとお世話をしてもらえる
- 何かあっても安心
- 将来の不安がなくなる
と感じると思いますが、実際のところご本人がそれで幸せかというと微妙なんですよね・・・
今回は入居拒否をし続けたある高齢者のお話をしたいと思います。
どうしても施設に入ることを嫌がったAさんの話
Aさんは元々自宅で1人暮らしをしていた方で、ご近所付き合いやデイサービスなどでたくさんの高齢者の方と交流がある社交的な方でした。
Aさんのお子さんはみんな遠くに住んでいて、年に数回しか会えないような関係でした。
そんなAさんが病気のため治療のために入院することに。
そして治療も住んで退院の話が出て、「お家に帰ろう」っていう話になったのですが、ご家族は
「自分たちが遠くにいて見守ることができないし、将来病気や認知症で何かあったら心配だから」
という理由でAさんを施設に入れようという流れになりました。
理解力もしっかりしているAさんは、その子供らの提案を聞いて激怒しました。
「私はこんなに元気なのに、施設なんか行かなくてもいいわよ。まだまだおうちで暮らせるわ。」
しかし子供らは必死に説得をし、結局Aさんは「お試し」という流れで一旦は施設へ入ることになったのです。
そこからAさんはみるみる元気がなくなってしまい、私たち看護師に対し
「もう死んでもいい。あの家に戻れないならどこにいてもしょうがない。」
「この気持ちは誰にも分かってもらえない」
こう呟くようになり、ひたすら窓の外を眺めて1日過ごすようになってしまいました。
その後、Aさんは予定通り施設へ退院となりました。
果たしてAさんは幸せだったでしょうか?
このように書くと確かにご本人は寂しい気持ちはあるけれども、ご家族としては仕方ないと思う方も多いのではないでしょうか?
ひとり暮らしで何かあったら心配というご家族の不安な気持ちはとてもよくわかります。
そしてどんなに本人が「嫌だ」と拒否をしても、
「施設へ行ってしまえば、その環境に慣れるんじゃないか?」
っていう期待もあるんですよね。
果たしてAさんは施設へ行ってどうだったのでしょうか?
入居拒否をしていたAさんの後日談
Aさんは施設に入った後も定期的に、うちの病院に通っていました。
そして病状も進行した頃にまた私の病院に入院になったんです。
「Aさん、久しぶりですね。施設での暮らしはどうでしたか?」
と、私も施設に入って楽しんでいたんじゃないかという期待を交えてAさんに聞いてみたところ、
「子供にあんな地獄に連れていかれて最悪でした。だまされたのよ。」
「私は一生あの子を憎んでいるわ。」
本当にこのままこう言いました。
そして、Aさんは自宅にも施設にも戻ることなく、そのまま病院でお亡くなりになりました。
これを聞いて、どう思うかはあなた次第。
私は私は退院調整看護師としてAさん本人の気持ちに寄り添うとやはり自宅に帰れなかったということは残念でしかなりません。
しかし自分の親だとして、家族の気持ちになってみると、やはりご家族の選択肢も間違ってはいないと思うんです。
結局のところ、答えなんてない
ただ言えるのは、ご家族が
ご本人の気持ちを無視して施設入居を進めてしまうのは良くない
ということです。
そして、絶対的なゴールが施設入居だと決めつけるのはよくないですよね。
確かに施設入居をしてお金を払っていれば家族は安心です。
でも、その安心と引き換えにご本人の残された時間の選択肢や生きる楽しさを奪うことが本当にいいのでしょうか?
私は地域包括ケアの推進を理想としていますが、やはり住み慣れた地域で地域のコミュニティーや社会資源を使いながら今まで通りの暮らしが叶う方法を考えていくという道も考えて行く方法もあると思っています。
実際に地域で在宅ケアを担当しているスタッフの方々は
「本人が望めば死ぬまで家にいることをサポートする」
と言ってくれる人もたくさんいます。
どんな医療行為をしていても家で暮らせる時代になりつつあります。
私は施設とか在宅とかどっちというよりも、ご家族としてもっといろいろな選択肢を「本人と一緒に」考えて行くことが大事じゃないかと思っているんですよね・・・
でもなかなか当事者にこのような提案をしにくいので、今回はブログでつぶやいてみました。
少しでもAさんのような悲しい高齢者の方が少なくなればいいなと思って書かせてもらいました。
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