よくある質問と相談事例

「一人暮らしの親が自宅で生活できるか」家族が考えるべき視点を看護師が教えます

さやみん

 

 

最近退院支援をしてみて、非常に増えているのが「一人暮らしでサポートが全くない」というケース。

 

子供がいても遠方に住んでいて、なかなか様子を見に来れなかったり、近くにいても仕事が忙しく、夜しかサポートがなかったりという場合がとても多いです。また家族そのものがいない(未婚で子供がいない)ケースも多くなっている気がしています。

 

そんな場合退院支援している私達も非常に悩みますが、家族も当然のように

「自宅で一人で過ごせるのか、施設などに入れた方がいいのか」

という選択で悩むことになります。

 

今回はそんな一人暮らしの親の介護について、家族がどう考えて、どのように決断すべきかを考えてみたいと思います。

まずは状態や生活環境の把握から

 

何はともあれ「親の状態と生活を知る」というのが第一歩で、一番重要なポイントになります。

だって何も知らなかったら、生活が出来るのかどうかなんてわかるはずもありませんからね。

 

でも本人に直接聞いて

「できるよ」「大丈夫」

という言葉を信じてはいけません。

 

アナタ自信の目で見て、判断するということが重要なんです。

 

本人はいくらでも「出来る」といいます。

私も仕事では患者さん本人の「出来る」という言葉は、半信半疑でとらえるようにしていますので。

 

 

ここからは生活に必要な動作などの項目を示します。

それぞれの項目について

  1. 「出来る」
  2. 「介助があればできる」
  3. 「出来ない」
  4. 「わからない」

というような感じで判断していきましょう。

ちなみに家族が「わからない」と感じた場合には、「出来ない」ケースがほとんどです。

 

というのも高齢者の体力の低下や認知力のの低下は、家族の知らないうちにかなり進んでしまっていることが多いのです。

 

1.体の状態(日常生活がどの程度自立しているか)

確認項目

  1. 歩く、座る、階段の上り下りなどの基本的な動作
  2. トイレの動作、失禁(おもらし)の有無
  3. 入浴
  4. 洗面、歯磨き、ひげそりなどの整容動作
  5. 家事(料理、掃除、洗濯)や買い物、病院への受診

 

歩く、座る、階段をのぼるなどの基本的な動作がどのくらいできるのか、歩く際に杖などの補助具が必要なのかをまずは知ることが大切です。

よく転ぶような方の場合には特にこのあたりを慎重に考えていきましょう。

その際には何かしら杖などの補助具や、介助などが必要となってくる場合が多いです。

 

また自分で整容(歯を磨いたり、ひげを剃ったり身なりを整えること)も本人自身で出来ているかも確認します。

 

自分で立ったり歩いたりは出来ているけれど、ひげは伸びっぱなし、入れ歯のお手入れも出来ていないような方がよくいらっしゃいますが、そんな場合には生活が自立しているとも言い切れない部分があります。

また家事や買い物は、さまざまなことを複合的に考えながら実施する高度な動作になります。

でもこれが出来ていないと、一人で生活していくのは厳しいですよね。

 

このように直接的な動作(立つ、歩くなど)とは違うけれど、日常生活に必要な細かな動作って考えるとかなりたくさんあるんです。

「自分で歩いているから、生活は問題ないだろう」

と考えてしまうのはとても危険なことなんです。

 

 

また「出来ない」と思われる項目については

 

誰かの手伝いがあれば自分で出来るのか

 

も同時に考えてみましょう。

 

それで出来るのであれば、サポートをうけながら自分で生活をすることが可能ということになります。

その際のサポートとしては

  • ヘルパー
  • 福祉用具貸与
  • 自宅改修
  • デイサービス   などのさまざまな方法が考えられます。

 

 

2.病気の状態・内服管理能力

 

  • 病気の理解
  • 薬の管理(飲み忘れはないか、指示通りに飲めているか)

 

高齢者は必ずといっていいほど持病を持っています。

その病気を家族の方は把握していますか。

さらに言うと飲んでいる薬やちゃんと内服が出来ているかということも把握できていますか?

 

高齢者で意外と多いのが「薬の飲み違いや内服忘れ、面倒で内服をやめてしまった」というケースです。

 

病気にもよりますが、薬によっては命に関わる事態にもなりかねませんので、しっかり指示通りの内服が出来ているのかを確認しましょう。

 

もし出来ていない場合には、活用できるサービスとして

「訪問薬剤指導」

などがあげられます。

 

また、糖尿病などがある場合には、血糖値測定やインスリン投与などを自分で実施していかなければいかないこともあります。今は内服だけだから大丈夫!と思っていても、進行に伴い、いずれはインスリン注射が必要になってくることも考えられるでしょう。

 

そのような医療的な処置が必要で、かつ自分自身での管理が難しくなった場合には

「訪問看護」

などのサービスを利用することも可能です。

 

3.認知力

物忘れや性格が怒りっぽくなった、頻回にものを盗まれたなどと訴えることはありませんか?

これは認知症で起こりやすい症状といえます。

認知症についてはまた今後詳しく書いていきたいと思います。

 

認知症といっても人それぞれでどんな症状がでるかはわかりませんが、まずは家族が「あれ?変だな?」と感じて気づくことが多いです。

 

特に一人暮らしの高齢者の場合には、刺激が少なくなりがちで、同じような生活を繰り返すため、認知力が低下しやすい状態といえます。さらに家族がめったに会えないとなると、気づいた時にはかなり認知症が進んでしまったというケースも・・・

 

そうならないためにも親がいつもと変りないかな?という視点で接していくようにしましょう。

 

早期に発見できれば、認知症の種類などによっては薬などで治療が出来るケースもあるのです。

 

しかし認知症を抱えながらの独り暮らしはかなりハードルが高く、リスクが付きまといます。

例えば火の始末や、鍵のかけ忘れなどで大きな事故や事件につながってしまう恐れもあります。

 

 

そのため認知症の診断があれば入れるような「グループホーム」などが適応になるかなども考えてみるといいかもしれません。

4.自宅環境

 

  • トイレや浴室に手すりはあるか
  • 玄関の段差の昇降はつらくないか
  • 布団に寝ていて、起き上がりは苦痛ではないか
  • 浴室で滑って危ない思いはしていないか

など・・・

 

何とか自分で生活が出来ているけれど、足腰も弱ってきてちょっと心配・・・

 

という場合には

「自宅を住みやすくする」

という方法も考えてみましょう。

1・体の状態の項目でもちょっと触れましたが、介護保険を利用すると自宅に手すりを設置出来たり、段差をなくせるような簡単なスロープなどを設置出来たりします。

 

福祉用具貸与といいますが、さまざまなグッズをレンタル出来るため、安心して生活するためにおすすめの方法といえます。

 

このまま一人で生活できるのか考えてみよう

 

上記で書いた項目のうち、1つでも不安に感じることがあったら要注意です。

 

その場合には将来的には、ひとりで暮らすことは困難となり、何かしらのサポートや施設などを検討していかなくてはいけません。

 

万が一、もう1人で生活するのが無理な状況であるならば、一刻も早く介護保険の利用などを検討するべきです。

 

ずるずるそのままにしておくと、病気などで倒れたり、事件や事故、火災などのトラブルに巻き込まれてしまう恐れもあります。

 

 

悩んだら身近な知識のある人に相談

 

ちょっと親が一人で暮らすの心配・・・

 

という場合には、身近な相談窓口に相談をしてみましょう。

「地域包括支援センター」「かかりつけの病院の相談員」「知り合いのケアマネージャー」など近くにいる専門の人に相談することで的確なアドバイスをもらうことが出来ます。

ちなみに私は病院の相談窓口にいるナースです。

どんな相談に乗っているのか気になる方はこちら↓

お金、介護、退院場所など…退院についての不安は病院の相談窓口へ~退院支援の専門家とは~

 

高齢者が安心して過ごすために・・・

 

  • 高齢者の方自身の出来ることを生かし大好きな自宅で出来るだけ過ごさせてあげたい。
  • 施設に入れるのはまだ可哀そう・・・

 

と思う方は、「自宅で安心して過ごせる方法」を考えてみましょう。

 

ちょっと長くなってきたので、ここからはまた次回に書かせてもらいますね。

 

まずはちゃんと生活と体の状態を知る事から始めてみましょう。

 

老人ホームとは⁉介護や施設をはじめて知る人のための超簡単解説

 



この記事を書いている人
管理人 さやみん
管理人 さやみん
現訪問看護師 ケアマネジャー 元退院調整看護師
総合病院勤務の時に1000人以上の患者様、ご家族様からの介護・病気・終活などの相談に対応。 「その人らしい生き方」「介護で苦しまない」をモットーにアドバイスしています。 治療も介護も正解はない! 「これでよかった」と思える人を増やすべくネット上で活動しています。
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