生前整理は親が入院したら考える!家族が知らない終活の想いとは
あなたは「親が入院した」と知ったら慌てますか?それとも「どうせすぐ戻ってくるだろう」と考えますか?
私は看護師としてさまざまな患者さんを見てきましたが、その結論として伝えたいのは
「親が入院して、必ず帰れると思わない方がいい」
ということです。
どんなに元気な患者さんでも急変が起こることもあるし、単純な病気だと思って検査をしたら進行がんが見つかったという方もいらっしゃいます。また長い入院期間になると、自分で歩くことも出来なくなってしまうことがほとんどです。
私は不安を募らせるために言っているのではなく、ご家族にとって高齢である親が入院するということはこのようなリスクがあるということを覚悟しておいていただきたいのです。
ご家族からはよく「また戻ってくると思ってたのに・・・」という言葉を聞きます。
元気な親を信じているからこその気持ちであるとは思いますが、もし自分の親が自宅に帰れなくなったらということを事前に考えておくことで、いざそうなった時の安心感が違います。また知識として覚えておくと後々役立つこともたくさんあります。今回は親が入院したら、子供として考える生前整理についてお伝えしていきたいと思います。
生前整理とは
「生前整理」と聞くと、死が間近に迫っている人に対して行うものと考えている方もいるかもしれませんが、生前整理は決してそんなことはなく、親が元気なうちから親子で今後のことを一緒に考えていくといった広い範囲のものも含みます。
そしてそれは現在では「終活」という呼び方もされており、広く普及され始めています。
ちなみに私達医療側から考えると「アドバンスドケアプランニング」といって、ざっくりいうと元気なうちから自分は最後までどのように生きたいかを意思表示をしておくことと意味づけられます。そしてそれを家族などと共有しておくことが重要とされているのです。
生前整理が必要な理由
私は約1000人もの患者さんを今まで看取ってきました。そして亡くなるまでの間、病室で患者さんの悩みや希望を聞き続けているのも看護師です。
個人的な統計にはなりますが、看取ってきた1000人の患者さんのうち、ご本人が納得して万全の準備ができて死を受け入れて亡くなった方は3割にも及ばないと思います。
例えば
- 「死ぬ前に一度家に帰って犬に会いたい」
- 「残したお金を遠い子供に渡したい」
- 「自己資産をすべて整理しに家に戻りたい」
- 「大事なパソコンだけでも、ここに持ってきて欲しい(この方はブログが生きがいでした)」
このような希望を看護師に伝えてくる患者さんは非常に多いのですが、残念ながら看護師は患者さんの家に訪問することはできません。もちろんお金や財産の話には関与ができません。
しかしこのようなことを考える時期には、ご本人様の病状も悪化しており一人で動けなかったり、すでに意識が朦朧としてしまっていることも。悩みはあっても、一人暮らしやご家族が遠方にいてなかなか誰かに頼めないという悩みを抱えたまま亡くなっていく方もいました。だからこそ家族内で生前にしておいて欲しいことや希望を共有しあっておくことが一番重要になってくるのです。
親が入院したら生前整理を考えるべき理由
上記のような看取りの現状があるため、生前整理は早すぎることはありません。今では20代、30代の人々が終活をしている時代です。
しかし高齢者を抱えている家族においては、このシビアな話題を出すことで本人などとの関係が悪くなってしまうのではないかと懸念する方もいます。そんな方にはぜひ、入院してからのタイミングで生前整理についての話題を出してみることをお勧めします。
- 家族主体で進められる
- 自宅に戻れなくなることもある
- 今後のことを考えやすい
- 本人と家族が就活に向き合ういい機会になる
このように入院をすると、ご本人も自分の将来を見直すいい機会にもなり、死ぬことまでは考えずにこれからのことを考えやすいタイミングだといえます。
後回しにするとどうなるか
それでも生前整理は「元気なうちにはしたくない」と思っている方も多いと思います。
しかし後々生前整理をいざしようと思うと損をしたり、思うように手続きが進まないといった事態になってしまうことも。
生前整理を後回しにしておくデメリットについてお伝えしていきます。
遺産相続や処分でもめる
遺産相続亡くなった後に遺産を整理しようと思うと、「相続」という問題が絡んできます。
生きているうちであれば、ご本人の意向を聞きながら平等に分配することもできますが、亡くなってしまうと相続税が発生したり、親戚中でも配分が異なったりするためもめる原因となってきます。
残念ながら相続でもめる方はいうのはお金がないことがほとんどです。「自分は大丈夫、そんなに相続するほどお金はないから」と思っていても、お金がない方ほど少ない遺産に対してもめる傾向があります。またご本人が住んでいた家や土地などは平等に分配することが難しいため、トラブルの原因となりやすいものです。
このように大変だからと後回しにしてしまうと、より大きな問題となって自分たちに降りかかってきてしまうのです。
認知症などになると判断ができなくなる
ご本人が元気なうちは、生前整理や終活の話題なんて出せないと思っている方もいますよね。
しかし高齢になり、認知力が低下してくると、入院というタイミングで生活環境が大きく変わることがきっかけでが、突然認知力が低下してしまうことがよくあります。
今までは1人でしっかり生活できていた方が、入院ご自分のお部屋も分からず、廊下をウロウロさまよってしまうということは看護師の中ではよくある話です。
そうなってしまうと、いざ遺産や資産のことを話そうと思ってもご本人の判断力が低下しているため、まともなお話をすることができなくなってしまいます。
こうなると後悔しても既に遅く、ご家族のみで生前整理を進めていかなければいけません。
ご本人から預貯金などの暗証番号を聞くことは不可能になっているかもしれません。
死を直前にすると何も話せなくなる
死んだ後のことを考えるのは申し訳なさ過ぎる、そんなことを考えるのは死が目前になった時でいいんじゃないか・・・
このように考えると必ず失敗します。
私は見取りをされた多くの家族を見てきましたが、死を間近に控えた患者さんに対して、死後のことを話し合えたご家族は誰一人としていなかったからです。
今まで何も終活について話してこなかった家族が、いきなり死を間近にした本人に死後の遺産や家族のことを話そうと思っても出来るわけがないんですね。逆に病気や厳しい予後のことは何も本人に話さないでくれ!といった希望を言われることが多いです。
反対にしっかりと本人と元気なうちから終活や生前整理について話し合ってきたご家族は、本人も死と向き合うことが出来ているため、家族とも死後のことについて話しやすい傾向があります。そしてご本人とも病気や予後のことも伝えあい、これからどうして生きたいかを一緒に考えています。
死んだ後のことは親が死にそうになったらと考えると絶対に行動できません。
だからこそ、死んだ後のことを考えるのは「親が元気なうちから」でないといけないのです。
効率の良い生前整理のすすめ方
それでは、ここから生前整理を考えてみようという方に向けて、効率の良い進め方をアドバイスしていきたいと思います
エンディングノートは控えた方がベター
最近エンディングノートと呼ばれる人生における希望や亡くなった後に家族に伝えたいことをまとめるためのノートが流行しています。
このようなツールを使うことはもちろんメリットがたくさんあっていいのですが、入院中ではこのノートを使うことによってご本人の気持ちを逆撫でしてしまう可能性も出てきます。
「病気で必死に戦っているのに、もう遺言を書けっていうことか!!!」
という風に捉えてしまう方もいるかもしれないので、ご本人の様子や性格などを考慮して方法を選んでみましょう。
個人的にはノートを使うよりも、病室で椅子に座りながら今後のことをのんびりとお話してみるのがいいかと思います。
深刻な話になると、ご本人も自分の病気はそんなに悪いのかと悲観的になってしまうことも考えられるため、穏やかな雰囲気の中で
「ねーねーお母さん、将来はあの家をどうするつもりなの?」
「もし、お母さんが動けなくなったらお母さんのお金はどうすればいい?」
などといった風にさりげなくそのようなお話に持っていく方が、自然でご本人様も気軽に生前整理と向き合うことができるのではないでしょうか?
いるものいらないものを明確に
生前整理において重要なのは必要なものと不要なものをしっかり明確にしておくことです。
個人の価値観は違うため、家族が価値があるものでもご本人様にとって見ればゴミ同然であったりすることもあります、またご家族にとってはゴミ同然のようなものでも、ご飯に様にとっては命を懸けてでも守りたい大切なものということもあります。
例えばよくあるのが仏壇。
ご家族からしてみれば、場所もとるし、古びた仏壇などはもう捨ててもいいようにも思いますが、ご家族ご本人にとって見れば自分の家族が眠る大事な場所として、絶対に処分したくないという方もたくさんいらっしゃいます。
このようにご本人様が何を大切にしており、何を残したいのかをしっかりよく話し合っていきましょう。
こうしておくことで、ご本人様が判断力がなくなったり、亡くなった後にもご家族だけで整理がしやすい状態を作っておくことができます。
財産はすべて家族が把握できるようにしておく
またご本人の財産はすべてご家族が分かるようにしておきましょう。
中には貯金を隠していたり、誰も知らなかった資産を持っていたりすることもあります。このような隠れた資産を何も知らないままご本人が亡くなってしまった場合、その貯金は活用できないまま国のものへとなってしまうことに・・・
ぜひご家族が損をしないためにも、ご本人とちゃんと向き合い、どのような資産があるのかを全て把握しておくようにしましょう。
また預貯金のカードの暗証番号などは聞き聞いておき、いつでも引き出せるようにしておくことも重要です。しかし遺産を狙っていると誤解されないよう、しっかり信頼関係を築いたうえでお話していくことが大前提となります。
自宅に帰れなくなった時が生前整理のタイミング
ここまで、生前整理のための準備についてお伝えしてきました。
そしてご本人様が病気が悪化したり体力が無くなって自宅で生活ができないと状態になってしまった時には、生前整理を実行するタイミングとなります。
その際はご家族が主体となって、ご本人の希望を聴きながら効率よく生前整理を進めていきましょう。
効率的に生前整理をするために便利なサービスを活用する
生前整理は、家族にとってかなりの労力を費やします。
ご本人様が1人暮らしをしていた場合には、ゴミや不用品などで家の状態もかなり悪いことが予想されます。その様な家を、少ない家族だけで片付けて掃除までするのはかなりの労力がかかります。子供らがそれぞれ仕事をしているような場合には日程の調整も難しかったり、時間が余裕を持って取れないといった問題も出てきます。
そんな時には、お金を払ってでも業者などに頼む方が精神的身体的にも負担が軽くて済みます。
今ではこのような生前整理のための清掃業者も増えており、比較的安い金額で依頼することもできるので、気になった方はサイトから料金などお問い合わせてみてください。
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自宅をどうするかも考える
自宅の片づけと一緒に、自宅そのものをどうするかを考えていくことも重要です。
「とりあえずそのままで」と誰も住まないような状態で放置してお置くことはかなり損をしてしまうことになります。最大で3000万円の税金が発生することにもなるため、自宅売却を少しでも考えている場合にはこちらの記事は必見です。
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まとめ
入院が生前生理のための一つのタイミングになると、この記事でお伝えしました。
生前整理なんて考えられないという方が、少しでも生前整理を考えるきっかけになってもらえたらと思います。また生前整理ということ自体が、亡くなっていくご本人に失礼だと思っている方もいるかもしれませんが、それは反対です。
入院している方を見ていると、多くの高齢者の方は「家族には言えない死んだ後の悩み」を私たちに看護師に伝えてくるのです。私はアドバンスドケアプランニングの重要性を知っているからこそ、ご本人に「その思いはご家族に伝えていますか?」と聞くと、
「こんなこと子供らには迷惑がかかるから言えないよ。」
とおっしゃるのです。
それならご家族からこの話題を積極的に出してあげて欲しい、私は一看護師としてそう感じたので記事にしてみました。
ぜひ親が入院したらこの生前整理と終活のことを思い出していただけたら幸いです。