よくある質問と相談事例

「家に帰りたい」「家で死にたい」けど退院できない。本当の退院ってなんだろう?

さやみん

こんにちは。退院調整看護師のさみんです。今回はみなさんに病院の退院の現状をお伝えしてみたいと思います。

病院には様々な医師がいて、その先生ごとに治療方針や考え方は全く違います。

でも、私達医療スタッフはすべて患者さんのために治療やケアを提供しているものだと私は思っています。

きっかけはとある患者さんの退院希望

ある患者さんは末期のガンでもう治療方針がないとご家族にお話がありました。

医師から家族への説明は

「このような状態では、もう治療もできないし、自宅に帰るのも大変ですから、自宅近くのお看取りまでできる病院を紹介します」

という内容でした。

まずはご家族として、それを受け入れを家族同士で話し合った結果、今まで大好きだったお家に帰してあげたいという結論に至ったそうです。

そして直接主治医の先生ではなく、私たち相談員の元へ相談にやって来ました。

話を聞くと、担当のケアマネージャーさんが、緩和ケア専門の訪問診療をしてくれる医師を探してくれてお看取りまで含めた計画的なプランを考えてくれているようでした。

私たちからご家族の希望があった緩和ケアの専門医に相談してみたところ、快く受け入れもしてくれるとのことです。

その結果を踏まえて、主治医の先生にお話をしてみたところ、なんと自宅退院は無理という返答が返ってきてしまいました。

「この方は様々な点滴もしていて、さらには出血のリスクも高いから家で帰っても危ないよ。」

さらにはなんと病棟看護師も

「この方はADLが低下していて、ほとんど全介助の状態。体を拭くのにさえ看護師2人がかりでやっているのに、自宅に帰ってもきっと無理でしょう。娘さんの考え方がちょっと甘いかな。」

との返答が返ってきてしまいました。

これを聞いた私、心の中で激怒。

私は訪問診療医が快く受け入れてくれていることやご家族が自宅に連れて帰って、最後の時間を家族でゆっくり過ごしさせたいという思いを伝えてみたのですが、結局ダメ。

またご家族と最終的な負担の覚悟まで確認して一から考え直すという結果になりました。

 

退院支援の常識ですが、このような終末期の退院支援において、お看取りを含めたケースは何よりもスピードが大事でとにかく急がなければいけません。

状態の急変で自宅への退院が不可能になってしまうことも少なくないからです。正直なところ、また家族と一から話し合っている余裕もないという状態でした。

終末期というのは、その次の通り、終わりを間近に迎えた人の期間です。

そのため私は退院支援の経験から、「家に帰りたい」「家で家族との時間を過ごしたい」と決めた方のケースはとにかく早く環境を整えてあげて、ご希望の自宅に安心して返してあげることが最優先だと思って支援をさせていただいています。

しかし、今回何よりもハードルになってしまったのは自分の病院で患者さんのために仕事をしている医師や看護師であったことが何よりも残念でなりません。

結局この医師と看護師の意見のために自宅へ退院するタイミングは逃してしまいました。

今の時代は在宅でできないことはない

私は訪問診療の医師や訪問看護師さんらと、日々関わらせていただいておりますが、その在宅スタッフたちは声を揃えてこう言います。

今の時代はね、家でできないことはないんだよ

点滴は当たり前にできるし、人工呼吸器をつけていてもお家で過ごすことができる。

どんな方でも希望すれば家に帰ってくることができるんだよ。

 

このように教えてもらったことが、今回は実践できなくて本当に悔しい気持ちでいっぱいです。

もちろん在宅退院を引き止めた医師や看護師の立場の意見ももちろんわからなくはないんです。状態の急変や出血のリスク、そんなことは私だって、そして本人・家族だってわかっているんです。

その治療よりも本人と家族が一緒に「家で死ぬこと」を選んだ、どうしてその意思決定を尊重してあげられないのか・・・

終末期はその人にとって1回きりのものなんです。そして、その人の人生はその人が決めなければいけないと私は思っています。

もちろん家に帰るデメリットもたくさんありますし、本人をサポートする家族の負担も大変なものです。もしかしたら退院してみて「やっぱり大変だった」と思うかもしれません。でもその気づきは退院をするからわかるものであり、そのまま希望をかなえられなかったら、一生家族が後悔をしながら生きていくかもしれません。

私ら退院支援の携わっている人間は、患者・家族の意思決定は揺れ動くものととらえています。

あの時は「帰りたい」って言ったけど、「やっぱり怖くなった」とか「帰ったらやっぱり病院が良かった」とか。そのような揺れる気持ちに寄り添い、できる限りのサポートをしています。

あなたはどう死にたい?家族に死にどう向き合いたい?

これを読んでいるあなたは最後の時間をどのように過ごしたいと思いますか?

また大事なご家族をどのように見とってあげたいと思いますか?

病院が安心だから、先生もついていてくれるからという意見もありますが、病院では亡くなる時には医療スタッフは立ち合いません。

家族がお看取りに間に合わず、病室でたった一人で孤独に亡くなっていく患者さんはたくさんいるんです。

病院の現状はこちら。

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今回は私個人の思いを書かせてもらいましたが、できるだけ多くの方に今の退院支援の現状を理解してほしいと思います。

地域包括ケアが叫ばれている今、病院が在宅への移行を足止めする理由は全くないと思うんです。

そのために医師や看護師は、在宅を見据えた関わり、それに必要な調整をしていかなければいけません。

もう予後がが残り少ないような方であれば、何よりも尊重するべきは延命でも医療処置でもなく、その人が残りの人生をどう生きたいかという気持ちです。

医療者としての責任感も分かりますが、どうか患者さんの気持ちやご家族の意思を尊重してあげてほしいと思います。

偉そうなことを書いてしまいましたが、今回の1件で本当に患者さんやご家族には悲しい思いをさせたと思っています。

少しでもこのような事例をなくしたいと思って、皆さんに、病院内での現状をお伝えしてみました。

この記事を書いている人
管理人 さやみん
管理人 さやみん
現訪問看護師 ケアマネジャー 元退院調整看護師
総合病院勤務の時に1000人以上の患者様、ご家族様からの介護・病気・終活などの相談に対応。 「その人らしい生き方」「介護で苦しまない」をモットーにアドバイスしています。 治療も介護も正解はない! 「これでよかった」と思える人を増やすべくネット上で活動しています。
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