認知症

入院中は認知症が進行しやすい理由と看護師が教える5つの対処法

さやみん

[char no=”7″ char=”ママ”]おばあちゃんがこのまえ、肺炎で入院したんだけど、なんか様子が変わっちゃって・・・自分が今どこにいるのかわからない時もあるみたいだけど、普通にしてる時もあるのよね。看護師さんからは夜寝なくて大変なんて聞いたけど、家ではそんなこともなかったのに。[/char]
[char no=”2″ char=”ナース”]それは心配ですね。おばあさんはもともと認知症みたいな症状はあったんですか?[/char]
[char no=”7″ char=”ママ”]ちょっと認知症っぽいってかかりつけの先生に言われてたことはあるんだけど、ちゃんと調べてもらったことはないの。でも私たちから見ても、たまに『あ、ぼけてるな』って感じることは結構あったかな。同じことを何回も話したり、スーパーで同じものを買ってきたりすることはよくありました。[/char]
[char no=”2″ char=”ナース”]そうなんですね。だとすると入院をキッカケに認知症がもとにせん妄(せんもう)が起こってしまったんだと思います。[/char]
[char no=”7″ char=”ママ”]せん妄?なんですか、それ?[/char]
[char no=”2″ char=”ナース”]せん妄っていうのは一時的な不穏状態のことで、入院などの環境の変化をキッカケに引き起こされることが多いんですよ。でも一時的なものなので、また落ち着けば元のおばあさんにもどると思いますよ。[/char]
[char no=”7″ char=”ママ”]そうなんですか、よかった![/char]
[char no=”2″ char=”ナース”]でも中には、入院をキッカケに認知症症状が悪化してしまう方もいるので注意は必要です。今回はそんな入院と認知症についてお話させていただきます。[/char]
[char no=”7″ char=”ママ”]お願いします![/char]

こんにちは、退院相談ナースのさやみんです。

今回は入院中の悩みの中でも多い、「認知症」についてです。
認知症患者の数は増加しており、2012年時点では400万人を超えており、2025年には5人に1人の高齢者が認知症になると言われています。

そんな認知症の高齢者の方が入院した場合について、ご家族の視点でお伝えしたいと思います。

入院中は認知症が進行しやすい理由

入院中は環境の変化が大きく、ご本人の認識が混乱してしまい、

  • 場所がわからない
  • 時間がわからない
  • 普段の家族がいない
  • 自分の家ではない
  • 知らない人(医師や看護師など)によくわからないことをされる恐怖

などから不安を感じ、様々な認知症の症状が出現してしまいます。

 

ご家族は本人の不安な様子やいつもと違う様子に戸惑ったりすることもあると思いますが、認知症を抱える高齢者の多くはこんな状態で入院中を過ごします。

 

私ら看護師としては「またか」くらいな程度にしか思わないよくある話。

 

でも家族としては

「おばあちゃん・おじいちゃんがこんなになっちゃって・・・」

と悲観的になってしまうこともありますよね。

 

でも認知症の方の特徴や対処法を理解しているとその不安も軽減されると思います。

次にその特徴と対処法をお伝えしますので、ご家族は「入院中はもしかしたら症状がしまうかもしれない」というつもりで、余裕を持って見守ってもらうとご本人も安心できるのはないでしょうか?

 

どんな症状が出やすいのか

 

では実際にどんな症状がでやすいのでしょうか?

  • 入院のお部屋を出て出歩いてしまう(徘徊)
  • 大声を出したり、暴れたりする
  • 落ち好かず、終始そわそわしている
  • 興奮して眠れない
  • 点滴の管や酸素チューブなどを引っ張たり抜こうとする

などなど。

典型的なものとしてはこんな感じですが、看護師エピソードを語りだしたら山ほどありますよ(笑)

 

ベッドの上で立って排尿をし始めたり、ナースコールの管に自分で絡まって見たり、車いすを横転させてみたり、かくれんぼしてみたり・・・(笑)

 

そんなふうに看護師を驚かせてくれるのも認知症患者様の特徴です。

 

 

看護師が入院中にしている対処法

看護師は認知症の方が入院中には、事故やケガなどをしないようにその方に応じたケアを実施しています。

その具体的な方法を紹介しますので、ぜひ自宅などの生活にも活用していただけたらと思います。

 

 

1:センサーなどで動きを把握

離床センサーといって、マット型やセンサー型、クリップ式で衣類に止めたりするタイプなど、さまざまなタイプのセンサーがあります。

これらの目的はベッドから離れようとしたり、部屋から出ようとした際に、いち早く他の人(看護師など)に教えることです。

 

そうすることで徘徊や転倒などを防ぐ効果があります。

 

他者がそばで見守っていると、本人も警戒心や不快感を感じてしまいますが、このセンサーであれば本人も気づかなかったり、気づいても気にせずに普段通り生活することが出来るのです。

 

これらは医療用機械かと思っていたのですが、今では普通にネットで購入できるみたいです。

 

ぜひおうちでもこのような見守りのためのアイテムを活用して、安心して暮らせる環境を整えましょう。

 

2:生活リズムに注意する

 

認知症の方は特に昼夜逆転などが起こりやすく、入院で環境が変化した場合にはかなりの確率で生活リズムが狂います。

夜中に「家に帰る」と暴れて叫んでいたと思ったら、昼間ウトウトしている・・・

 

こんな時には無理にでも日中覚醒してもらうようにし、夜間は安定剤や眠剤などでお休みできるようなリズムを強制的にとらせてもらうこともあります。

 

3:思いを否定せず、本人のペースを尊重する

 

認知症の方と接していると、「それは違う」と感じることが非常に多くあります。例えば

  • 病院を家だと思って、歩き回っている場合
  • 家だと勘違いして何かを探している場合
  • 看護師を誰かと勘違いしている場合

 

などなど・・・人や場所などがわからないためこのような認識の間違いはよくある事なのですが、重要なのはそれを否定しないこと。

 

本人はそうと信じているし、否定をすることでプライドが傷つけられたと感じたり、余計に混乱を招いてしまう恐れがあるためです。認知症の方は認知色が低下しても、感情や羞恥心などは衰えないとされています。

ですので、むやみに叱ったり指摘をしてしまうと逆効果。

 

本人の気持ちに寄り添いながら、考えを傾聴(うんうん、そうなんだ、と受け入れる姿勢を示す)していくかかわりが大切なのです。

 

4:家族など本人が安心出来る方に付き添ってもらう

看護者だけでどうしても対処が出来ない場合には、夜中でも家族に連絡し付き添いをお願いすることもあります。

 

詳しくはこちら↓

入院中の呼び出しがある場合ってどんな時?家族が入院したときにはいつでも駆けつけられるようにしておこう

ご家族としては納得されず、怒ってしまうケースもありますが、このような認知症の方には安心できる方法として家族が必要な場合もあるのです。

 

どうか嫌な顔をせず、お願いしたいと思います。

 

5:他の患者さんや病院に影響を及ぼすレベルでは、退院してもらうことも

 

それでもどうしてもご本人が暴れたり、他の患者のものを盗んでしまうなど他者への迷惑行為が見られた場合には、強制退院となる場合があります。

実際に強制退院となる方は、数か月に1度くらいはいますかね・・・

 

そんなケースの場合には私たちも何もサポートができないまま、ご自宅へ戻られることになりますので、ご了承ください。

 

退院後の注意点

上記で認知症の対応のポイントを紹介してきましたが、自宅でもできるようなこともありましたよね。

病院と違って、自宅では看護師もおらず、ご本人が自由に行動できる環境になります。

そんな退院後の生活では何に気をつければいいのかを家族の視点で考えてみたいと思います。

詳しくはこちらの記事を参考にしてみて下さい↓

「一人暮らしの親が自宅で生活できるか」家族が考えるべき視点を看護師が教えます

 

自宅へ退院後に利用できるサービス

自宅へ帰り今まで通りの生活が送れるか、事故や家事などのトラブルの危険性はないか、もしちょっとでも心配なことがあるとしたら、家族が何かしらのサポートをする必要があります。

 

サポートというとご家族が介護を負担するというイメージが強いかもしれませんが、決してそんなことはなく、たとえ認知症であっても、一人で生活していけるようなサービスが国はしっかり整備してくれているのです。

要はそのサービスをどれだけ知っていて活用できるか。

 

そんなサービスの種類などについて紹介していきたいと思います。

とにもかくにも要介護認定!

まだ要介護認定をしていない(要支援・要介護などの判定を受けていない)方は何よりも介護保険証を役所へ持って行って、要介護認定をすることが第一優先です。

まずこれがないと何にも介護サービスを利用することが出来ません。

詳しい手続き方法はこちら↓

要介護認定をわかりやすく解説 した方がいい人・してはいけない人とは

 

在宅サービスを利用する

まずはお家で生活するためのサポートについてです。

  • ヘルパー:調理や掃除・洗濯といった家事援助
  • デイサービス:施設へ行って食事や入浴サービスなどを提供してもらう
  • デイケア(通所リハビリ):施設へ行ってリハビリをする
  • 福祉用具貸与(上記で紹介したセンサーもこれで借りることが可能)
  • 訪問看護・訪問薬剤指導:薬の管理が出来ない場合など薬を1回分ずつ分けたり、内服確認をしてくれる

 

など、家にいながらサービスを受けることも可能です。

 

施設への入居を考える

やっぱり家で生活するのは不安だと感じる場合には施設への入居を考えてみてもいいでしょう。

認知症の方が対応となるケースは

  • グループホーム:認知症と診断された方のみが入居できる施設
  • 有料老人ホーム:介護サービスを受けながら、暮らせる民営の老人ホーム(入居条件は施設によって異なる)
  • サービス付き高齢者向け住宅:高齢者向けの賃貸住宅。定期的な見守りを実施。希望があれば外部の介護サービスも利用可能。

 

自立出来ている認知症の方が入居に適した施設というのはこのような施設があげられます。

 

本人の状態や地域にある施設、お金のことなどを考えながら探していくといいでしょう。

老人ホームなどの施設選びで失敗する原因トップ3はこれだ!

安い施設は危険⁉失敗する老人ホームの5つの特徴とは

施設選びで失敗しないためにも、ぜひ相談や施設の見学などは慎重にすすめていきましょう。

 

まとめ

入院中は認知症が進行・悪化しやすい環境にあることが理解していただけたでしょうか?

でも看護師はそんな方にもしっかり対応できるスキルを持っています。

 

そんな病院での方法を家でも実践してみたり、入院中にサービスを利用できるように手続きをすすめていくと退院後のご家族に負担はぐっと減ると思います。

ぜひこの機会に認知症のことを理解して安心して退院できるようにしましょう!

 

 

 

この記事を書いている人
管理人 さやみん
管理人 さやみん
現訪問看護師 ケアマネジャー 元退院調整看護師
総合病院勤務の時に1000人以上の患者様、ご家族様からの介護・病気・終活などの相談に対応。 「その人らしい生き方」「介護で苦しまない」をモットーにアドバイスしています。 治療も介護も正解はない! 「これでよかった」と思える人を増やすべくネット上で活動しています。
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