がんになっても一人暮らしはできる!?治療しながら自宅ですごす方法と入居できる施設とは
今や2人に1人ががんになる時代です。明日は我が身、いつがんの恐怖が自分や家族に起こるかわかりません。
しかし今の時代家族の形態も変化しており、高齢者のみの世帯や、生涯独身という方も増えています。
そんながんと独り暮らしという、組み合わせで今回は考えていきたいと思います。
私自身、「退院調整看護師」として小さな総合病院で働いています。
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患者さんやご家族の方に退院支援をする中で感じることは、癌になっても、
- 身寄りがいない
- 家族が遠方でサポートできない
- でも自宅に帰りたい
という方は増えているということ。
癌という大きな不安を抱えながら生活をしていくことは、ご本人にとってもかなりつらいものだと思います。
今回はそんながんの方が、一人暮らしでも(あるいは夫婦のみの世帯などでも)自宅で生活することは出来るのかを考えていきたいと思います。
この記事は
- 自分や家族ががんと診断された方
- 1人暮らしや夫婦だけで今後生活が出来るのか不安を感じている方
に向けて生活の視点で書いています。
ぜひ参考にしていただけたら幸いです。
結論: 一人暮らしはできる
言い切ってしまいましたが、正確には「できないことはない」です。
癌って聞くと多くの方が
- この先短い
- 1人じゃ何も出来ない
- どんどん弱っていく
というイメージを持つようですが、必ずしもそんなことはありません。
実際に私は看護師として関わる中で、
おむつを利用することを徹底的に拒否し、お亡くなりになる前日まで1人暮らしで自宅でトイレまで歩いていた
という方もいました。
今の医療は
「その人の希望に寄り添いながら、その人らしく最後まで生きる」
ということを尊重して関わっています。
このことを医療用語では「QOLの維持・向上」なんて言われます。
だから結論としては、一人で今まで通り生活をすることも可能だし、助けを求めたいときにはいつでもサービスを利用して安心して生活をすることも可能です。
自宅で使えるサービスとは
今までのような自分らしい生活をするためには、さまざまなサポートを活用していくことが重要です。
- 介護保険のサービス(ヘルパーなどが生活において必要な援助を行う)
- 訪問看護(看護師が身体の状態を観察したり、緊急時の対応や医療面のサポートを行う)
- 訪問診療(医師が定期的に自宅へ訪問し、診察や処方を行う)
- リハビリ(日常生活で必要な動作が維持できるよう、リハビリの施設へ通ったり、自宅へ訪問してもらうこと)
など・・・
他にも薬剤師や栄養士が相談対応をしてくれるサービスもあったり、さまざまな介護・医療スタッフのサポートをうけて生活を送ることが可能です。
癌=今までの生活ができない
と思い込んでしまうのは間違いです。
家族の不安
そうはいっても、家族の不安はかなり大きなものだと思います。
- 自分で生活が送れるのか
- 病状がわからない・この先どうなるのかという不安
- 痛みが強くなった時や緊急時の対応はどうするのか
- 自宅でそのまま誰にも気づかれずに孤独死をしていたら・・・
などご本人以上に心配をしている家族は少なくありません。
よく
「父は今まで通り自宅にいたいなんて言ってますが、絶対に無理です!看護師さんからも父に言ってやってください」
という要望を聞くことがあります。
医師の中には家族の意見を尊重して、ご本人に医療設備が整った施設などを勧める医師もいますが、私はご家族の希望だけでご本人の生活場所を無理矢理決めてほしくはないと思います。
癌という告知をされたことで、ご本人も悩み苦しんで「今までの自宅で生きる」という決断をしたことでしょう。
看護師はご本人の苦しみを理解することは出来ませんが、病室で悩み、落ち込み、一人で考える患者の姿をそばで見ていると、その決断を簡単に扱ってはいけないと思うんですよね。
上記のような発言をする家族に限って、たまにしか面会に来ないし病院にもクレームを言うような、あまりご本人の気持ちを真剣に聞いてあげてないような家族が多いです。
誰よりも苦しんでいるのは患者さん自身です。ご家族はぜひそんなご本人の気持ちを尊重してあげて欲しいなと心から願います。
ガンになってからも入居できる施設はある!?
ご本人が特に自宅にこだわらず、安心できる居場所がいいと希望されるなら「施設へ入居する」という選択肢もあると思います。
でもがんと診断されて入居できる施設なんてあるの?と思いますよね。
ちゃんと探して、内容を確認すれば入居できる施設はあります。
例えば
- 療養型病床
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護付き有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅(介護型)
などですかね。
特養(介護老人福祉施設)も医療体制としては適応にもなりますが、人気過ぎて入居までの期間がかかるというデメリットを考えると、上記のような施設が妥当じゃないかなという感じがします。
しかしがんと診断されて、「抗がん剤治療」を実施するような場合には、「まるめ」と呼ばれる入居費の中に医療費が含まれている施設(老健など)の場合には、抗がん剤治療でかかる高額な医療費のために入居を拒否されてしまうこともあります。
治療も継続しながら、施設へ入居するということであれば、民営の
- 介護付き有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
などが適切ではないかと思います。
しかし定期的な受診や治療のための病院への送迎などは、家族がしなければいけないという施設もあります。
施設へ入居したら、家族の負担はなくなるということではありませんので、しっかり確認をするようにしましょう。
今後どうなるのかを理解しておくこと
癌を抱えながら生活を送るうえで重要なのは
「今後起こりうることを理解し、予測すること」
です。
これは経験がないと不安でしかないと思いますが、医師や看護師などの医療スタッフであれば、がんの進行に伴う症状の出現や進行の段階などはある程度予測することが出来ます。
反対にご家族は、病気を認めたくない・経験が少ないなどの理由(家族の受容段階というものもありますが。)から、どんなに状態が悪くなっていても
- 悪くなってない
- またよくなる(回復する)
- 治療が出来る
と信じてしまう方が非常に多いです。
残酷な言い方ですが、医師から予後などの説明があった場合にはそんなことはほぼありえません。
だからこそ生活の中に医療スタッフが関わり、ご家族の心理的なサポートや今後起こりうる症状などをしっかり伝えるという役割が重要になってくるのです。
家族の受け止めがしっかりできていると、残りの期間を本人のためにどう過ごそうかという視点で関わることが出来るので、ご本人・ご家族にとっても有意義な時間が過ごせるのではないかと思います。
ご家族はがんの家族を見守るうえで、
ご本人の意思を尊重し、今後の状態がどう変化していくのかを理解し、ともに寄り添っていく
ということを大切にしてもらえたら嬉しいです。
まとめ
がんと診断されても、今まで通りの生活を送ることは可能です。
しかしその根底には
- ご本人の希望
- 家族や医療スタッフの理解とサポート
があって成り立つ生活だといえます。
今後の生活場所を考えるうえで、参考にしてもらえたら嬉しいです。
読んでいただき、ありがとうございました。
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